☆『週刊読書人』2011年6月3日にて、中川成美先生による書評が掲載されました☆
要約
印象派から未来派まで、短時日のうちに芸術史を駆け抜けた孤高の作家・有島武郎の文学と思想の軌跡を、『或る女』『惜みなく愛は奪ふ』『星座』など代表作を網羅して執拗に追究した。近代の総決算でもあり、現代の出発点ともなったその転回の様相を、〈創造的生命力〉〈小説構造論〉〈芸術史的転回〉〈表象のパラドックス〉の4つのキーワードに即して縦横無尽に論じ切った、著者のテクスト文芸学の到達点。旧版を大幅に拡充した増補改訂版。
目次
序 言葉の意志
新編について
I 「色は遂に独立するに至つた」 有島武郎文芸の芸術史的位置
II 「魂に行く傾向」 有島武郎におけるウォルト・ホイットマンの閃光
III 係争する文化 「文化の末路」と有島武郎の後期評論
*
1 過激な印象画 「かんかん虫」
2 生命力と経済 「お末の死」
3 不透明の罪状 『宣言』
4 永遠回帰の神話 「カインの末裔」
5a 迷宮のミュートス 『迷路』
5b 楕円と迷宮 『迷路』
6 想像力のメタフィクション 「生れ出づる悩み」
7 悪魔の三角形 「石にひしがれた雑草」
8a コケットリーの運命 『或る女』
8b 無限の解釈項 『或る女』
8c 〈考証〉『或る女』はいつ始まるか
9 他者としての愛 「惜みなく愛は奪ふ」
10 こどもに声はあるか 「一房の葡萄」
11 表現という障壁 「運命の訴へ」
12 意識の流れの交響曲 『星座』
13 言葉の三稜針 「或る施療患者」
14 客 「酒狂」「骨」「独断者の会話」
*
反啓蒙の弁証法 「宣言一つ」および小林多喜二「党生活者」と表象の可能性
注
あとがき
初出一覧
索引
【旧版(有精堂、1994)より増補のある章】
Ⅰ 「色は遂に独立するに至つた」
Ⅲ 係争する文化
5b 楕円と迷宮
8b 無限の解釈項
8c 〈考証〉『或る女』はいつ始まるか
14 客
補論 反啓蒙の弁証法
【著者紹介】
中村三春(なかむら みはる)
1958年、岩手県に生まれる。東北大学大学院博士課程中退。北海道大学大学院文学研究科教授。日本近代文学・比較文学・表象文化論専攻。著書に、『フィクションの機構』(ひつじ書房、1994年)、『修辞的モダニズム―テクスト様式論の試み―』(ひつじ書房、2006年)、『係争中の主体―漱石・太宰・賢治―』(翰林書房、2006年)など。
中村三春先生のホームページ 「Project M:中村三春ホームページ」
研究会の情報や、「初学者へのアドヴァイス集」などを公開されていらっしゃいます。
○誤植に関するお詫び
本書にて、以下の誤りがありました。誠に申し訳ありませんでした。
p.314 5行目
誤 『或る女』の冒頭は、七月二十一日を含めて
正 『或る女』の冒頭は、九月二十一日を含めて
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