ひつじ書房 近現代日本語の「誤用」と言語規範意識の研究 新野直哉著 ひつじ書房 近現代日本語の「誤用」と言語規範意識の研究 新野直哉著
2020年2月刊行

ひつじ研究叢書(言語編) 第165巻

近現代日本語の「誤用」と言語規範意識の研究

新野直哉著

定価6500円+税 A5判上製 304頁

白井敬尚形成事務所(ブックデザイン)

ISBN 978-4-8234-1011-6

ひつじ書房

A Study of "Misuse" and Norm Consciousness in Modern Japanese
Niino Naoya


【内容】
本書は、副詞“全然”に関する昭和10~20年代を中心とした学界・一般社会双方における規範意識の考察や、現代日本語における「誤用」の定番例として知られている “気がおけない”・“世間ずれ”・“名前負け”等の使用実態と言語規範意識についての考察を行い、さらに昭和戦前~20年代の日本語の実態とそれに関する言語規範意識の研究に役立つ新資料の紹介およびそれを用いた研究の実例をも示したものである。



【目次】


はじめに 本書の目的と概要

序章 「誤用」・言語規範意識について

   1. はじめに
   2. 「誤用」について
   3. 言語規範意識について
    3.1 先行文献から
    3.2 文学者の言説
    3.3 言語研究者の見解
    3.4 本書の立場
   4. おわりに

I 副詞“全然”をめぐる言語規範意識について

第1章 言語規範意識記述を日本語史研究資料としてどう考えるか 2人の研究者の“全然”をめぐる記述を例に

   1. はじめに
   2. “全然”をめぐる言語規範意識
   3. 2人の日本語研究者の“全然”に関する昭和40年代の規範意識
    3.1 岩淵悦太郎(1905〜1978)
    3.2 大石初太郎(1911〜2003)
   4. 昭和10年代の“全然”の使用実態
    4.1 岩淵悦太郎
    4.2 大石初太郎
   5. 考察
   6. おわりに

第2章 “全然”に関する国語学者浅野信の言語規範意識 昭和10年代を中心に

   1. はじめに
   2. 浅野(1935)に見られる意識
   3. 浅野(1943a)に見られる意識
   4. 浅野(1971)に見られる意識
   5. おわりに

第3章 『青い山脈』(昭和22年)の「全然同意ですな」について 「変な軍隊用語」とは?

   1. はじめに
   2. 問題の場面
   3. 鈴木(1993)の示した二つの可能性について
   4. 「全然同意」について
    4.1 もう一つの石坂作品
    4.2 「軍隊用語」としての例
    4.3 軍隊とは直接関係ない例
   5. 「ですな」について
   6. 「宿題」へのひとまずの解答
   7. 単行本本文について
   8. おわりに

第4章 平成期新聞記事に見られる“全然”に関する言語規範意識

   1. はじめに
   2. 先行研究
   3. 調査方法
   4. 調査結果の概観―『読売』
    4.1 Ⅰ期(1〜15年)
    4.2 Ⅱ期(16〜20年)
   5. 調査結果の概観―『朝日』
    5.1 前期(1〜16年)
    5.2 後期(17〜31年)
   6. 考察
    6.1 『読売』の調査結果について
    6.2 『朝日』の調査結果について
    6.3 両紙の比較
   7. おわりに
   追記 今日の肯定を伴う“全然”の意味について

II 現代日本語の「誤用」「気づかない意味変化」の事例について

第1章 慣用句“気がおけない”の「誤用」について

   1. はじめに
   2. 先行研究
    2.1 見坊豪紀によるもの
    2.2 見坊以外の研究者によるもの
   3. 世論調査の結果
   4. 今日の実例調査の結果
    4.1 ウェブ記事
    4.2 新聞記事
    4.3 雑誌記事
   5. 「誤用」の意味
   6. 「誤用」の発生理由
   7. 世論調査と実例調査の結果のずれ
   8. 「誤用」の初例
   9. 今後の展望
   10. おわりに

第2章 “世間ずれ”の「誤用」について

   1. はじめに
   2. “世間ずれ”の「正用」と「誤用」
   3. 実例の調査結果
    3.1 新聞記事
    3.2 その他の資料
   4. 世論調査の結果
    4.1 1993年の調査
    4.2 2005年・2014年の調査
   5. 「誤用」発生の要因と背景
    5.1 類例の存在――“時代ずれ”“世間離れ”
    5.2 「世間から(と)ズレる」の例
    5.3 二種類の「世間」
   6. 「誤用」の「初出例」
    6.1 見坊豪紀の挙げる「誤用初出例」
    6.2 「誤用初出例」への疑問
    6.3 新たな解釈
    6.4 もう一つの疑問
   7. おわりに

第3章 “名前負け”の「誤用」について

   1. はじめに
   2. 先行文献
   3. 世論調査の結果
   4. 「誤用」の発生時期
   5. 今日の新聞記事における実態
   6. 考察
   7. 今後の展望

第4章 “嗚咽”の「気づかない意味変化」について 一般雑誌記事を契機とした言語変化研究の一例

   1. はじめに
   2. “嗚咽”の意味に関する2件の記事
   3. “嗚咽”の本義と新義
   4. “嗚咽”の実例調査の結果
    4.1 「現代日本語書き言葉均衡コーパス(BCCWJ)」
    4.2 新聞記事データベース
    4.3 雑誌記事データベース
    4.4 論文データベース
    4.5 日常の言語生活の中で見出した用例
   5. 「気づかない意味変化」
   6. 新義の発生と浸透についての考察
   7. 新聞・雑誌記事の資料価値
   8. おわりに

III 昭和期言語研究・言語規範意識研究のための新資料について

第1章 昭和前期の総合月刊誌における新資料(その1) 「現代語考」(昭和10年)

   1. はじめに
   2. 当時の『文藝春秋』について
   3. 「現代語考」について
    3.1 「ことばはゆらぐ」
    3.2 「移りかはり」
    3.3 両文章の比較
   4. 共通の事例
    4.1 女学生の「君・僕」
    4.2 “みたいだ”
   5. おわりに

第2章 昭和前期の総合月刊誌における新資料(その2) 「語学者ばかりの座談会」(昭和11年

   1. はじめに
   2. 取りあげられた事例
    2.1 「ませ」と「まし」(255)
    2.2 妻の呼び方(255–256)
    2.3 「私はあなたが好きだ」と「私はあなたを好きだ」(256)
    2.4 “が”と“けれども”(256)
    2.5 “とても”(256)
    2.6 “みたいだ”(256)
   3. おわりに

第3章 昭和10年代の国語学・国語教育・日本語教育専門誌に見られる言語規範意識

   1. はじめに
   2. 調査対象
   3. 調査結果
    3.1 言語規範意識についての説
    3.2 副詞“とても”について
    3.3 「ら抜き言葉」について
    3.4 “耳ざわりが(の)よい”
   4. おわりに

第4章 新資料「ひまわり女学生新用語辞典」(昭和25〜27年)について

   1. はじめに
   2. 掲載誌『ひまわり』について
   3. 「新用語辞典」の概要
   4. 「新用語辞典」の内容
   5. 副詞“全然”に関する言語規範意識研究資料として
   6. 接尾辞「的」に関する資料として
   7. おわりに

    おわりに 本書をまとめるにあたって
    初出一覧
    参考文献
    索引


【著者紹介】
新野 直哉(にいの なおや)
〈略歴〉1961年秋田県出身。東北大学大学院博士課程単位取得退学。宮崎大学教育学部教員を経て、国立国語研究所員(現在、准教授)。博士(文学)。〈主な著書〉『現代日本語における進行中の変化の研究―「誤用」「気づかない変化」を中心に』(ひつじ書房、2011年)〈主な論文〉「大正期『文藝春秋』の記事に見られる言語規範意識」近代語学会編『近代語研究』20(武蔵野書院、2018年)、「大正2年『読売新聞』の日本語関係記事について―「新聞記事データベース」活用の一例として」国語語彙史研究会編『国語語彙史の研究』38(和泉書院、2019年)、など。



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