ひつじ書房 言語と慣習性 ことわざ・慣用表現とその拡張用法の実態 土屋智行著 ひつじ書房 言語と慣習性 ことわざ・慣用表現とその拡張用法の実態 土屋智行著
2020年2月刊行

ひつじ研究叢書(言語編) 第164巻

言語と慣習性

ことわざ・慣用表現とその拡張用法の実態

土屋智行著

定価4200円+税 A5判上製 152頁

白井敬尚形成事務所(ブックデザイン)

ISBN 978-4-834-1010-9

ひつじ書房

Language and Conventionality: Socio-cognitive Approaches to Idioms, Proverbs, and Their Extensional Use
Tsuchiya Tomoyuki


【内容】
本書は定型表現とその拡張用法の網羅的な記述・分析を通して、言語と慣習の関係を認知・社会的な側面から考察したものである。日本語慣用表現や諺をはじめとした定型性の高い表現を多く収集し、コーパス言語学の手法を用いて分析している。また「形式的変化を容認しにくい」と言われていた定型表現が様々な形式的変化を伴って使用されている事例を示し、定型的言語から創造性が発揮されるダイナミズムを理論的にまとめ上げている。



【目次】


まえがき

第1章 定型表現と認知のかかわり

 1.1 本書の目的
 1.2 本書の立場
 1.2.1 コーパスをはじめとする言語資料を利用した分析
 1.3 本書の位置づけと流れ
 1.3.1 本書の位置づけ
 1.4 本書の流れ
 1.5 社会・認知的アプローチの重要性
 1.5.1 慣習的・全体的理解と分析的理解
 1.5.2 定型表現の記憶への依存性
 1.5.3 共有された知としての定型表現

第2章 言語学における定型表現の流れ

 2.1 アプローチの批判的検討
 2.1.1 意味的な観点からの分析と課題
 2.1.2 定型表現の定義に関わる問題点
 2.2 拡張用法に焦点を当てた研究の意義
 2.3 まとめ

第3章 慣用句の意味的なゆらぎ 修飾関係と文脈の観点から

 3.1 慣用表現の意味的な変容
 3.2 修飾要素の付加と挿入による慣用表現の意味分析
 3.3 日本語慣用表現における身体部位詞の比喩的拡張
 3.3.1 分析可能の高い慣用表現と低い慣用表現
 3.3.2 慣用表現にもちいられる身体部位詞とその意味について
 3.4 慣用表現の意味構造のゆらぎ
 3.4.1 身体部位詞の意味拡張のゆらぎ
 3.5 まとめ

第4章 慣用句とことわざの形態的・意味的傾向

 4.1 定型表現の下位カテゴリーの相対性
 4.1.1 定型表現の下位カテゴリーの分類
 4.1.2 辞書記述からみる定型表現の実態
 4.2 形式的・意味的局所性と拡張
 4.2.1 定型表現の形式的・意味的局所性
 4.2.2 通時的な拡張と定着の可能性
 4.2.3 先取り現象と再分析による構文的機能の創発の可能性
 4.2.4 定型表現のパラディグマティックな関係と意味構造
 4.3 まとめ

第5章 定型表現の拡張用法

「決まった言い回し」は決まったままか?
 5.1 定型表現の創造的拡張と認知能力
 5.2 定型表現の談話的機能
 5.3 定型を基盤とした拡張用法の修辞的機能
 5.3.1 定型表現の拡張用法理解の認知的条件
 5.4 コーパスからの拡張用法の収集と分析
 5.4.1 分析対象
 5.4.2 分析手法
 5.4.3 分析結果
 5.5 より大規模な英語コーパスを利用した分析Do Androids Dream of Electric Sheep?を例に
 5.5.1 コーパスおよび収集方法
 5.5.2 結果
 5.5.3 拡張用法に利用されるパターンの検討
 5.6 考察
 5.6.1 元表現の喚起と言語知識の慣習性
 5.6.2 定型表現の逸脱と保持の均衡状態
 5.6.3 定型表現の談話的機能の再考
 5.7 まとめ

第6章 コミュニケーションと記憶

 6.1 個人、社会、そして両者の関係からみる定型表現の拡張
 6.1.1 個人がもつ定型表現の意味構造とその変化
 6.1.2 公共的な定型表現の知識の変容
 6.1.3 創造的言語使用の基盤としての定型表現
 6.2 個人と言語コミュニティの相互連関

第7章 おわりに 定型表現研究の精緻化に向けて

 7.1 展望
 7.1.1 他の言語現象とのかかわり 構文の抽出と認定
 7.1.2 関連分野への応用可能性 第二言語学習者による定型表現の拡張用法
 7.2 課題
 7.2.1 通時的な定型表現の拡張の可能性
 7.2.2 定型表現の拡張の意図性
 7.2.3 より目の細かいスキーマ化の必要性

 参考文献
 索引
   


【著者紹介】
2006年国際基督教大学教養学部卒業。2008年京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了。2011年同研究科博士課程満期退学。2013年博士号取得(人間・環境学)。日本学術振興会特別研究員(DC2)、国立国語研究所の非常勤研究員(言語資源研究系)を経て、2015年より九州大学言語文化研究院助教。専門は認知言語学、コーパス言語学。



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