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 1998年6月10日 ひつじ書房に新卒者の採用について問い合わせをしようと思っている方へ

来年、卒業の4年生の方からメールをいただいた。ひつじ書房に就職したいというありがたいお言葉で、感謝にたえないが、我々はまだ、新卒者を受け入れる様々な余裕がない。ということで、以下のような返事を出させていただいた。同じ様なメールには、同様な返事をだすと思うので、あらかじめ回答を掲載しておくことにした。同じことをお聞きになりたい方は、読んでいただければ幸いです。

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○○○○さま

メールありがとうございます。また、小社に関心を持っていただいたこと深く感謝します。

まことに残念ながら、小社の規模は小さく、新卒者の採用の予定はないのです。それは、小社の規模では、新人を社会人として基礎的な常識を教えること、編集の基礎を教えることの経済的・時間的な余裕がないためです。

また、学術書の編集者として適性は、地味な仕事でもこつこつできること、かといってルーティンワークしかできないというのではダメで、仕事の中で、自分の力で創造的なことを見つける能力も必要です。また、著者や書店の人とつきあうというサービス業的な要素もあります。多少の無理難題にもにこやかに処しつつ、通すべきことは通すという戦略的な社交性も必要です。地味でありつつ、創造的であり、社交的というのは、言葉で言うのは簡単ですが、適した人はなかなかいないのが、現状です。そのくらいの能力がある人は、100人に1人もいないでしょう。そんなに高度な能力を持っている人なら、出版社よりももっといい会社に就職できます。出版社は、経営的な規模が小さくて、給料が安いのです。また、著者の都合で遅れた原稿を期日に間に合わせるといった場合、残業も生じますが、その残業代を全て払えるかというと、払えないのが普通です。となると、能力に比して見返りが少ないですから、本が本当に好きでないとつとまらないのです。重い荷物も女性でも、運ばなければなりません。

本が好きといっても、趣味的に好きなのではダメで、そのための苦しみが、沢山ありますが、どうにか笑顔で切り抜けられるような、したたかな愛でないとダメなんです。

しかも、旧来の出版社のあり方が、変化してきていますから、従来の本作りのノウハウだけではなく、インターネットの変化に対する興味とホームページを作れるくらいの能力はもう不可欠です。日常の生活の中でも、ある程度いつも本を作ることを考えていなければなりません。

これは、労働としては、かなり高度なことを求めています。それでいて、給料は安いのです。

この適性(貧乏と多忙に耐えつつにこやかであり、創造的であること)が、あるかどうかは、たぶん、2年くらいたたないとわかりません。この時、雇い入れる会社の方では一番コストが掛かる時期です。社会人としての常識はもちろん、パソコンの使い方を教え、レイアウトソフトの使い方を教え、本の作り方、出版社の常識、本の常識、人との接し方を教え、ホームページの作り方を教え・・・。人間としての基本的なことをこっちから、教えていながら、給料を払わなければなりません(笑)。このコストを、払っていながら、「やっぱり、本は好きだけど、作るのには向いていない」などといわれたら、それまでの苦労と時間とコストはいったいどうなるのか?「返してくれ」といいたくなるかもしれません。

というわけで、超小規模な企業としては新卒の採用は、できないのです。新卒の採用をするとしても、一年くらい、学生時代に来てもらってという上でないと無理です。適性は、いっしょに働いてみないとわからないからです。5人くらいでやっていると相性が合わないとお互いに悲惨です。

他のスタッフとの相性もあります。一度、雇ったら、簡単に辞めてもらうわけにはいかないでしょう。4年生になっていて、今更いわれてもとお思いになるかと思いますが、小さい企業で働くということは、そういう前提がないと無理なのです。あるいは、普通の企業に2年ぐらい勤めて、やっぱり給料が、半分になってもいいから、本を作りたいという決意がもうあるような場合でないと難しいと思います。

いろいろよけいなことも述べましたが、これからの就職活動でのご活躍を祈念しています。なにか、出版社への就職についてお尋ねになりたいことがあるようでしたら、ご遠慮無くお問い合わせ下さい。私が分かる範囲で時間の許す限りアドバイスもできることがあるか、と思います。

小社に関心をお寄せいただきまして、まことにありがとうございました。

今後とも小社をご支援下さい。

                                   ひつじ書房 松本 功

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 1998年6月15日 大阪屋と太洋社の口座開設

秋にトーハンと日販の口座を開設した。この二つの取次店は、2大取次店と言われ、取次店の中では別格であるが、規模の点でいうと少し小さい、取次店の全体の中では真ん中の大きさのところ、大阪屋と太洋社との取引を7月から開始する。両方とも、集荷に来てくれるということになりそうである。集品に来てくれると、一週間の中で数回納品することが可能であるから、注文品にも速く対応できる。これはありがたいことだ。

口座開設のお願いに行こうとおもっていはいたのだが、ずっとさぼっていた。今回、ボイジャーの『T-Time』を扱う件もあり、もろもろあって再開したということ。

 1998年6月17日 書店さんのFAX番号を入力中

書店さんのFAX番号は、380件以上データベースに入れてあり、テレコムファインダーを使って、自動的に送信できるようにしてある。これには、ほぼ半日から一日かかる。今度のメディアコミュニケーション叢書の刊行に合わせて、これを補強しつつある。来週の半ばくらいには、新たに加えた書店さんにFAXを送ることになるだろう。

 1998年6月26日 ちょっと感動しました。書店さんのFAX

ようやく、FAX番号の入力が終わり、今日は朝からFAXを送り続けました。300件ほどの書店にFAXしたのですが、感動することがありました。今は、11時30分なのですが(今日は車で帰ります)、ついさっき送り終わったのです。FAX番号の元のデータが古いのか、電話兼用なのか、いくつかの書店で「はいっ! ○○書店です」というのが、モデムの向こうから聞こえてきます。人がいて、仕事をしていて、電話を取ってくださった、というわけです。11時近い時間でも、そんな風に受話器を取っている書店員がいるのです。彼らは、こんな時間でもきちんと仕事をしているのです。FAX番号の間違いが結構あったので、そんな声をいくつも聞いてしまいました。私は、こころの中で、スミマセンという気持ちと頑張っているナーという気持ちでいっぱいになりました。

今、送っているのはボイジャーと提携して刊行する『T-Time インターネット<縦書き>読書術』と『インターネット快適読書術』の宣伝のFAXです。売れてくれるといいなと思っています。

 1998年6月28日 Publishing on WWW Indexβ版公開

ひつじサーバーの調子が悪く、自宅からアクセスできないので、急遽、事務所にでることにした。日曜日でいい天気なのにトホホ・・・。ひつじサーバーのマシン(Powermac6300/120)には、今、ひつじのサーバーの他に、ファイルメーカーで作ったデータベースサーバーが、入っている。現在、ひつじのサーバーに2つ。書評の方にはデータベースが、3つ動いている。計5つ。これは何が動いているのかというと、ひつじの場合は目録が検索できるようになっているのは、当然のこととして、hituzi.co.jpとshohyo.co.jpで連動して動かしているのだが、書評には、出版社インデックス、書評インデックスが、まずあり、その他に研究会のデータベースがある。所在は、ひつじの方にあるのだが、(学術)情報データベースがある。これは、将来の出版社の活動をにらんでの実験なのである。どういうことかというと、本の情報はもともと出版社の主な仕事であるわけだが、紙の本になっていないものでも、重要であり、有効な情報というものは多い。たとえば、論文であったり、エッセイであったり、そのようなものが、オンラインにあるのであれば、紙の本と別段かわるものではないだろう。子どもの不登校のことについて考えるとき、紙の本だろうが、オンライン上の言葉であろうが、関係ない。また、かつて良く言われて(私も言っていた)いたことに、オンライン上で独自の編集による本が出来るではないか、ということがある。不登校の情報の所在一覧とそのなかで重要なものを示せば、それはもう立派な論文集であり、著者の複数いる本と同じである。てなことを、インターネット勃興期には良く言ったものだが、ほとんど誰も実行している人も出版社もない。まあ、だから、そのための基礎作りとでもいいましょうか。実務は、タスカル君がほとんど100パーセントやってくれた。良く集まっていると思う。多くの方の投稿・登録を期待したい。将来的には、オンラインで論文を発表した、何かを書いたら、ここに登録するというふうになってほしいものだ。学術情報に関して言えば、非常に大きな貢献になると思うのだが。

ということで、形としての出版社がなくなっていくための準備の作業だ、といったら、ことを荒立てすぎだろう。しかし、このよいうな試みをしていくこと自体、21世紀の出版社を模索する仕事である、と言っておこう。零細出版社には負担ではあるが。今日来たのも、ファイルメーカーがシステムエラーを起こしたためであった。トホホ・・・。ただし、ファイルメーカー自身の検索は、時間のかかるものでも900ミリ秒程度で実行できているので、検索が遅い場合は、回線の速度のせいであろう。


日誌 98年4・5月

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