池上嘉彦・守屋三千代 編著
A5判 定価2,500円+税
ISBN 978-4-89476-431-6
ひつじ書房
本書は〈自然な日本語〉〈日本語らしい日本語〉とは何かという問題に取り組む姿勢で、認知言語学を踏まえ、外国語と対照しながら、どのような場合にそれが創出されるか、その点に関する学習者の理解を深めるにはどう説明すればよいかを、具体例とともに考えるものである。 目次 1. 〈認知言語学〉から〈日本語らしい日本語〉へ向けて【池上嘉彦】 1.1 言語研究の対象としての〈ことば〉ー〈ことば〉か〈ことば〉と〈ひと〉か 1.2 〈認知言語学〉でいう〈認知〉とはー〈感覚〉と〈知覚〉と〈認知〉 1.3 〈意味〉の意味ー二項関係か三項関係か 1.4 〈好まれる言い回し〉ということー母語話者による〈事態把握〉の普遍性と相対性 1.5 〈好まれる言い回し〉から〈自然な言い回し〉へー〈〜語らしさ〉という言語感覚 1.6 相互理解へ向けてー言語と文化の偏見を避けるために 2. 認知言語学の日本語教育への応用と有効性【守屋三千代】 2.1 はじめにー認知言語学のどこに注目するか 2.2 認知言語学を日本語教育に応用するとは 2.3 具体例から考えるー日本語話者と学習者の認知の営みに注目する 2.4 おわりにー学習者の認知の営みをサポートする 3. 日本語教育の場に現れた認知言語学の世界【守屋三千代】 3.1 「自然な日本語」の教科書と認知言語学の概念 3.2 日本語話者はどう話すかー学習者の場合と比べて 4. 日本語話者は〈見え〉のままに話す【近藤安月子・姫野伴子・新村朋美・守屋三千代、コラム:生越直樹・徐一平・本多啓】 4.1 「ここはどこ?」(私は見えない) ◆コラム 「你、我、他(她)」 4.2 嬉しい!」(感情・感覚は私のもの) ◆コラム 形容詞と形容詞一語文 4.3 「何食べた?」「うなぎ」(〈見え〉のままに) 4.4 「はい、すぐ来ます」(原点は私ー1) 4.5 「高橋さんが送りました」(原点は私ー2) 4.6 「来られたの? 来てくれたの?」(情意を優先) ◆コラム 受け身と恩恵 4.7 「ネコ、おにぎり食べてる!」(イマ・ココで見てる) ◆コラム 「テイル」と「タ」 4.8 「あった!」(イマ・ココで見た) ◆コラム テンス・アスペクト 4.9 「飛んでいる飛行船が見えます」(事態まるごとー1) 4.10 「結婚することになりました」(事態まるごとー2) 5. 日本語話者は共同で話す【近藤安月子・姫野伴子・新村朋美・守屋三千代、コラム:生越直樹・徐一平・本多啓】 5.1 「これは名刺です」(共同注意ー1) ◆コラム 無助詞 5.2 「これ? これは私のですよ!」(共同注意ー2:コソア) ◆コラム 指示語 5.3 「忙しかったんですから」(共同注意ー3) 5.4 「いいお天気です」「そうです」(共同注意と共感ー1:終助詞) 5.5 「あっ!」「えっ?」(共同注意と共感ー2:感動詞とあいづち) 6-6. 「どうしよう」(主観の共有ー1:(よ)う) 5.7 「行かない?」「じゃあ、行かない」(主観の共有ー2:否定) ◆コラム 否定プラス疑問の表現 5.8 「駅にお着きになったらお電話いただけますか」(主観の共有-3:配慮) ◆コラム 共同注意と配慮 6. 英語・中国語・韓国語から考える【守屋三千代・生越直樹・徐一平・本多啓】 6.1 「カリンちゃんと傘」と概要 6.2 「カリンちゃんと傘」の英語訳から見えてくるもの 6.3 「カリンちゃんと傘」の中国語訳から見えてくるもの 6.4 「カリンちゃんと傘」の韓国語訳から見えてくるもの 6.5 会話文全訳 7. 日本語教育・日本語教科書を考える【近藤安月子・姫野伴子】 7.1 既存の日本語教育・日本語教科書の問題点 7.2 〈見え〉のままに話す指導の改善への提案 7.3 これからの教科書開発のためにー共同で話すことの指導